【経営者必見】役員借入金・役員貸付金とは?

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内容や違いなどを解説

 POINT

  • 会社側からみると「役員借入金」は、役員から借金をしている状態!「役員貸付金」は、役員にお金を貸している状態!
  • 役員借入金は、問題となることは基本的にはない!役員貸付金は、税務上も融資を受ける上でも問題ありなので可能な限り計上しない!
  • 役員借入金・役員貸付金は本来であれば存在しない方が良いため、可能な限り決算では残高が残らないことが望ましい(特に役員貸付金)!
役員借入金・役員貸付金とは?

会社を経営していると、会社・経営者などの役員間でお金の貸し借りを行うことがあるかと思います。決算書では、会社が役員から借りたお金は「役員借入金」という負債の勘定科目となるのに対して、会社が役員に貸したお金は「役員貸付金」という資産の勘定科目となり、会社からの視点で名称が変わります。名称は似ておりますが、取り扱いが全く異なりますので、詳細を確認していきましょう。

・役員借入金(役員からの借入金):貸し手「役員」、借り手「会社」
・役員貸付金(役員への貸付金):貸し手「会社」、借り手「役員」

それぞれの違いとは?
【役員借入金】
  • 会計上:将来返済する必要があるため、負債として計上されます。
  • 税務上:基本的には問題になることはありません。
  • 金融機関からの評価:金融機関から融資を受ける際には、決算書(※1)などを基に会社の評価を行うこととなりますが、役員借入金が計上されていても基本的には悪い評価になることはありません。役員借入金は会計上は負債(買掛金、借入金など)として計上されますが、金融機関から融資を受ける際、返済不要の資金の場合には、実質的に会社の純資産(※2)とみなされるため、良い評価に繋がります。融資を受ける際には負債は少ない方が良く、純資産は多い方が金融機関からの評価は良くなります。純資産が多いとその会社の安全性が高いということになりますので、融資をしても返済がしっかりとできる会社であるという評価を受けます。

    (※1)会社が一定期間の経営成績や財務状況をまとめたもの。
    (※2)会社の資産から負債を差し引いた残りの部分であり、簡単に言うと会社の「正味の財産」。
  • 利息の計上:通常、金銭の貸し借りを行う場合には、利息が発生することが一般的ですが、役員借入金の場合、会社は役員に対して利息を支払うことは任意とされています。その理由として、会社は営利目的で存在しているため、借入をしても利息を払わなくて良い状況であれば、必ずしも支払う必要はありません。そのため、会社は金利0%で資金調達が可能となります。利息を設定することも可能ですが、その場合は、役員が受け取った利息は所得税の課税対象となります。
  • その他:役員借入金は、役員からみると貸付金という資産であるため、役員が死亡した場合には相続税の対象となります。
【役員貸付金】
  • 会計上:将来返ってくるお金であるため、資産として計上されます。
  • 税務上:問題があります。
  • 金融機関からの評価:役員貸付金が試算表に計上されていると、「会社のお金」と「経営者などの役員個人のお金」との線引きができていない会社ということで、融資の際には不利な扱いとなります。金融機関の融資のポイントとして、貸したお金がきちんと返せるかという返済能力と、貸したお金が予定通りに使われたかという使途が重要となります。決算書に役員貸付金が多額に計上されていると、設備投資の資金として融資したものであっても、そのお金が流用されるのではと疑いをもつことがありますので、金融機関の融資審査では厳しい評価となります。
  • 利息の計上:会社は営利目的で存在しているため、役員貸付金を行う場合には、必ず金利を設定して利息を取る必要があります。会社が役員に貸付をする場合は、金利0%は使えません。役員借入金では設定しなくても良かった利息ですが、役員貸付金の場合は必ず適正な利率を設定し、利息を計上する必要があります(一部例外あり)。
最後に

会社は「営利」を目的とするため、借りているお金よりも貸しているお金を重視します。お金を借りて事業規模を拡大するのは営利目的に沿いますが、会社のお金を人に貸すこと(貸金業等除く)は法人の営利目的にはそぐわないため、「役員貸付金」については厳しい取り扱いとなります。役員借入金・役員貸付金は、本来であれば存在しない方が良い勘定科目となりますので、あくまでも一時的な借入・貸付にとどめておき、多額にならないようにしましょう。役員個人の口座やクレジットカードから会社の経費を支払ってしまうことで、役員借入金が計上されてしまうケースがよくありますが、可能な限り決算期ではこれらが残高として残らないよう、決算期前に精算をしておくことが望ましいものと考えます。

  • 当事務所の顧問先様については、役員借入金や役員貸付金については会計入力の際に毎月末の残高をお伝えし、資金繰りに応じて精算をしていただいておりますが、融資をご検討されている場合にはお早めにご相談下さい!

※記事の内容は、投稿時点での税法その他の法令に基づき記載しています。本記事に基づく情報により実務を行う場合には、専門家に相談の上で行って下さい。